松本雄貴のブログ

本。映画。演劇。旅。

20回目「仮面の告白」(三島由紀夫:新潮文庫)

三島由紀夫の「仮面の告白」は、高校生の頃に始めて読んだ。それ以降は読んでいないので、恐らく約20年ぶりの再読だ。内容は殆ど覚えていなかったが、「糞尿汲取人」という単語だけは鮮明に覚えていた。薄学な高校生にとって、三島由紀夫は難解であり読了…

19回目「マイ・ファニー・レディ」(ピーター・ボグダノヴィッチ監督)

登場人物の関係性がごちゃごちゃとしており、最初の10分程はなかなかストーリーが掴めなかったが、途中から人物の関係性が分かってくると面白い。脚本がよくできている。コールガールとして働く女性が、演出家の客と出会う。彼女を気に入った演出家が彼女…

18回目「ブラックホーク・ダウン」(リドリー・スコット監督)

10代の頃は、戦争映画にアレルギーを持っていた。特にハリウッド産の戦争映画に対しては、どうせアメリカ側の正義を一方的に押し付ける映画だろうと決めつけていたので、殆ど見ていない。 20代になって「プライベートライアン」とか「地獄の黙示録」とか…

17回目「機械・春は馬車に乗って」(横光利一 新潮文庫)

コロナの影響で仕事がめっきり暇になり、家にいることが多くなった。せっかくの機会なので普段以上に本を沢山読もうと意気込んでいるのだが、何故かあまり捗らない。平時は休日にカフェで読書をするのだが、今は普段行くカフェが臨時休業している。また、不…

16回目「メタモルフォシス」(羽田圭介:新潮文庫)

表題作の「メタモルフォシス」と「トーキョーの調教」の2作品が収録されている。 どちらも、マゾヒズムという特殊な性癖を有した男が主人公で、そっち方面の描写がかなりエグい。墓地での露出プレイなどは序の口で、おっさんに肛門を掘られたり、ウ●コを食…

15回目「きょうの猫村さん・カーサの猫村さん」(ほしよりこ:マガジンハウス)

自分は、猫が好きだ。しかし「猫が好き」と公言している人は、あまり好きではない。「猫が嫌いな人」よりは、「猫が好き」な人の方が幾分、マシではある。でも、昨今の猫ブームに乗って猫好きアピールをしている人を見るのは、なかなか辛いものがある。猫に…

14回目「異邦人」(アルベール・カミュ:新潮文庫)

コロナウイルスの影響で「ペスト」が売れているらしい。未知のウイルス《ペスト》に立ち向かう人々の話で、「異邦人」と並ぶカミュの代表作であり不条理文学の金字塔だ。出版不況とか、若者の活字離れとか言われて久しいが、読書の習慣がなかった人でも、割…

13回目「その街の今は」(柴崎友香:新潮文庫)

この小説は平成18年に書かれたらしい。つまり、今から12年ほど前に書かれた小説だ。舞台は現代の大阪で、現代人の女性が主人公だ。ここでいう「現代」とは、12年前のことをいう。要するに12年前の柴崎友香さんが、12年前の大阪を舞台に書いた小説…

12回目「塩狩峠」(三浦綾子:新潮文庫)

敬虔なクリスチャンの父母の元に産まれた青年が、様々な人との出会いと別れの中で成長し、自らも敬虔なクリスチャンになり、最後は列車の事故から自らの身を犠牲にして乗客の命を守り死ぬ、という物語。要するに、一人の人間の幼少期から死ぬまでの一生を描…

11回目「髪結いの亭主」(パトリス・ルコント監督)

まず、タイトルが良い。なぜ、タイトルが良いかというと、映画の内容がまさに「髪結いの亭主」の話であるのと、これは、ネットで初めて得た知識なのだが、「髪結いの亭主」とは、日本の諺でもあり、その意味は「旦那が働かず、嫁の稼ぎで食っていること」或…

10回目「パラサイト 半地下の家族」(ポン・ジュノ監督)

カンヌのパルムドールに続き、アカデミー賞作品賞まで獲った話題の韓国映画。なので、沢山の人が観て、沢山の人がレビューを書いている。なので、今さらネタバレがどうのこうのいうレベルでもないだろう。むしろ、多少ネタバレしたところで、面白さに変わり…

9回目「痴人の愛」(谷崎潤一郎:新潮文庫)

男は真面目で、知識・教養があり、年上で人生経験も豊富で、良い職に就き、安定した収入(かなりの高給)があり、自立している。基本的には常識人。女は不真面目で、年下で、カフェの給仕以外の社会経験がなく、勉強もできない(英語の発音はとても上手いけれど…

8回目「告白」(町田康:中央公論新社) 猫町倶楽部の読書会にて

猫町倶楽部という団体が主催している読書会に参加してきた。 課題本を読了した参加者たちが、グループに分かれて課題本の感想を言い合う。1グループがだいたい7,8人で、テーブルを囲って読んだ本について語り合う。ワンドリンクが付いていて、アルコールも飲…

7回目「コンビニ人間」(村田沙耶香:文春文庫)

現在進行形で活躍されている現代作家の小説は、ほとんど読まない。別に読まないと決めているわけではないが、あまり食指が動かない。現代作家の書く小説は、活字離れが著しい現代において、どこか「読みやすさ」「わかりやすさ」のみに重点が置かれているよ…

6回目「リチャード・ジュエル」(クリント・イーストウッド監督)

自分が今までに見たイーストウッド監督の映画は「運び屋」「15時17分、パリ行き」「ハドソン川のきせき」「アメリカン・スナイパー」「グラントリノ」「ミスティックリバー」「チェンジリング」「硫黄島からの手紙」「ミリオンダラーベイビー」の9本だ。比…

5回目「希望のかなた」(アキ・カウリスマキ監督)

シリアからフィンランドに亡命してきた青年と、新たにレストランの経営を始めた中年男性のお話。シリアスな内容なのにたまに笑わせる。レストランメニューを寿司に変更したくだり、面白かった。青年がフィンランドの保護施設で面接官相手にシリアからフィン…

4回目「透明な迷宮」(平野敬一郎:新潮文庫)

巻末に平野敬一郎のメールアドレスが載っていって「小説の感想などもお待ちしています」なんて書いてあったから感想を送ろうかなと思う。6つの短編が収録されている。初めて読んだ作者で、なんとなく文体が三島由紀夫ぽいと感じて後でネットで調べたら、確…

3回目「スリー・ビルボード」(マーティン・マクドナー監督)

アメリカの小さな町で、凄惨な事件が起きた。被害者は何者かにレイプされた挙句に殺害された。そして、7年が経過したが未だに犯人は分からず手掛かりさえ掴めない。業を煮やした被害者の母親は、道路沿いに立ててある3つの巨大看板に警察への抗議の広告を載…

2回目「マジカルガール」(カルロス・ベルムト監督)

脚本も演技も演出も全て素晴らしいけれど、好きになれない映画というものも存在する。「マジカル・ガール」そんな映画だ。 白血病で余命1年も無い娘のために、娘の好きなアニメの衣装を買ってあげようとするが、高価すぎて手が出ない無職の男。このおっさん…

1回目「家族を想うとき」(ケン・ローチ監督)

失業中の夫が、妻と二人の子供を養うため、宅配ドライバーとして再スタートする物語。タイトルとドラマのあらすじだけを聞くと、いかにも、家族の絆を描いた心温める映画だと思うだろう。しかし、結論からいえば、この映画はそんな生易しい映画ではない。観…