小説
すごい小説だし、長文のレビューを書いたけど、消えてしまった。もう一回書く気力がない。ただ、どうしても言いたい事をひとつだけ。 ヒロインの名前。「フルーツ」って。 ダサいし悪趣味だ。 本当は、このめちゃくちゃ面白い小説に敬意を表して、かなり長く…
あらすじ 1861年の農奴解放令によっていっさいの旧価値が崩壊し、動揺と混乱を深める過渡期ロシア。青年たちは、無政府主義や無神論に走り秘密結社を組織してロシア社会の転覆を企てる。――聖書に、悪霊に憑かれた豚の群れが湖に飛び込んで溺死するという記述…
内容 ケープタウンの大学でロマン派の詩を教える教授デヴィッド・ラウリーは、離婚歴2回の52歳の男性。「文学部」から「コミュニケーション学部」への大学の再編成で大きな波に洗われながら、教えているクラスの女子学生メラニー・アイザックスとのスキャン…
あらすじ 一瞬の閃光に街は焼けくずれ、放射能の雨のなかを人々はさまよい歩く。原爆の広島――罪なき市民が負わねばならなかった未曾有の惨事を直視し、“黒い雨”にうたれただけで原爆病に蝕まれてゆく姪との忍苦と不安の日常を、無言のいたわりで包みながら、…
哲学的なテーマを妄想するのは昔から好きで「なぜ人は生きているのだろう?」「なぜ、何もないのではなく何かがあるのだろう?」みたいな事を考えてテンションが上がることは常々あるのだが、いかんせん、面倒くさがり屋なので、疑問に思うだけで、その疑問…
内容 失踪した友人を探してインド各地を旅する主人公ロシニョール。彼の見たインドは貧困、不気味な占い師、混沌に満ちた世界と旅の触れ合い、そしてインドの美しい夜景。だが、友人を探しに来たはずの彼は……。 感想 映画化もされてるらしいが、そちらは未見…
内容 郊外の住宅地にある築七年の中古マンションで、夏実は夫と小三と幼稚園児二人の息子と暮らしている。専業主婦の暮らしに何といって不満もなく、不自由があるわけでもない。けれど蛇口から流れる水を眺めているときなどに覚える、放心に似ためまいーー。…
淫乱の母親から産まれた異父兄弟の物語。兄は文系で作家、弟は理系で科学者。回想や過去の話が入れ子のようになっており、なかなか読みにくい。人物相関図も中上健司の『枯木灘』よりかはマシだが、まあまあ複雑。異父兄弟という事で、それぞれの父親の系譜…
作家のクズエピソードはよく聞く。太宰治なんかを筆頭に。文学、とりわけ純文学というジャンルは、なんとなく「ダメ人間告白合戦」「特殊性癖告白合戦」のような趣がある……ような気がする。自身の屑人間ぶりや性癖を、虚飾なく正直に書けば立派な文学である…
村上春樹氏は有名人なので、皆さんがだいたいの粗筋を知っているという前提で書きます。 文庫本で全四巻(第一部2巻+第二部2巻)。のべ1300頁くらいあり、かなり長い。4巻目の途中くらいまでは、面白かった。山を挟んだ向かいに住むミステリアスな男、死ん…
「自分たち宇宙人だ」と思い込んでいる家族の話。要するに、狂人の話である。或いは本当に宇宙人である可能性もある為、断定はできないが。 数多ある三島由紀夫の小説の中でも異色だと感じた。多分、作者名を知らずに読んだら、三島由紀夫だと気付かなかった…
モーパッサンの中編2つが収録されている。『脂肪の塊』と『テリエ館』 有名な作品だが、初めて読んだ。『脂肪の塊』についてのみ述べる。いや、『テリエ館』も面白いのだが、『脂肪の塊』の方が印象が強いので。 「脂肪の塊」というのは、主人公である娼婦の…
真偽のほどは定かではないが、宮沢賢治は生涯童貞だったらしい。この話を知った当時の自分は、何故か心の底から安堵した。恐らく、高校生だった。当時の自分は、勉強もスポーツもできない、陰気な学生だった。異性からモテる要素が皆無であった。性欲は人並…
少し遅いが、今年の4月に亡くなったポール・オースターの追悼ということで読んでみた。いわゆるニューヨーク3部作の第1作目。後の2作は『幽霊たち』と『鍵のかかった部屋』。といっても、この3作は連作というわけではなく、それぞれ独立している。 自分は過…
先日、ヨーロッパ企画という劇団の『来てけつかるべき新世界』という芝居を観た。 まあ面白く、何度も笑った。AIとロボットが大阪新世界に住む庶民の暮らしを席捲する近未来の話。基本的には、吉本新喜劇のようなドタバタコメディを基調としていて、バカバカ…
中学生の頃に『車輪の下』『デミアン』を呼んで以来のヘルマン・ヘッセである。 『知と愛』である。「ナルチスとゴルトムント」という副題が付いている。ナルチスもゴルトムントも人物名だ。「知」を重んじるナルチスと「愛」を重んじるゴルトムント。時に哲…
現役で活躍する現代作家の現代小説を読んだのは久しぶりだ。 平野啓一郎さんの『ある男』 シングル・マザーの里枝は、谷口大祐と名乗る男と出会い再婚する。ある日、大祐は仕事中の事故で命を落とす。やがて、夫だと思っていた「谷口大祐」は名前も素性も過…
映画『関心領域』の感想を書こうと思ったが、やめる。すでに多くの人が、ブログや動画でこの映画の感想を述べ解説している。幾つか拝見したが、そのどれもが非常に得心のいくもので、今更自分如きが、このブログで言及しても意味がないと思ったからだ。 ただ…
村上春樹は中学生かそこらくらいに『ノルウェイの森』を読んで、ナルシスティックな世界観がどうにも自分には合わないと思い、それ以降、読むのを敬遠していた。どうせ、ちょっと影がある感じのミステリアスなイケメンが生の喪失感に悩むような話なんでしょ…
めっちゃ久しぶりのブログ投稿です。 ヴァージニア・ウルフの『灯台へ』は、自分的にはカフカの『城』よりも難しかった。 家父長制への批判みたいなものがテーマになっているのは分かる。 が、そんなことより登場人物たちの会話が面白い。 第一部のラスト近…
ヌーヴェル・ヴァーグの旗手、フランソワ・トリュフォーの長編第一作。といっても「ヌーヴェル・ヴァーグ」がどういうものなのか、実はよく分かっていない。漠然とは分かる。「即興演出とか大胆な省略とかを用いて撮った当時としては革新的な映画の総称」く…
坂本龍馬とか新選組が好きな人はけっこういるが、「徳川慶喜が好き」という人には出会ったことがない。よく耳にする「好きな歴史上の人物は?」といった質問に徳川慶喜を一番目に挙げる人は稀な気がする。日本を近代化に導いた立役者の一人であることは間違…
10代から60代の6人の男が主人公。それぞれ年齢が高い順に「昭生」「豊生」「常生」「夢生」「凪生」「凡生」という名前が付けられている。彼ら6人のそれぞれの人生を、昭和から平成の終わりまでの歴史と同時に描かれる。令和は入っていない。 橋本治の…
この小説の主人公はエマという名前の女性である。エマの物語である。しかし、タイトルは『エマ』ではなく『ボヴァリー夫人』である。小説内では、エマの行動と心理が最も多く描かれているのにも関わらず、この著しく主体性を欠いたタイトルが興味深い。しか…
言ってしまえば、「不倫の果て」のような小説である。芸能人の不倫がゴシップになる度、「他人の事などどうでもいい」とか「興味がない」とか嘯いているが、そのくせ、つい関連するネット記事などを漁ってしまうのは、やはり、不倫に興味があるからだ。不倫…
解説で澁澤龍彦が書いているように、『音楽』は三島由紀夫の作品群の中では主流ではない。マイナーな作品である。しかし、個人的には『仮面の告白』や『金閣寺』のような代表作より、この『音楽』の方が好きなのだ。理由は、他の三島作品を読んだ時に感じる…
『ちびまる子ちゃん』のクラスに藤木という男子がいる。藤木は他のクラスメート達から卑怯者のレッテルを貼られている。なぜ藤木は卑怯者になったのか。詳細は覚えていないが、最初の方のエピソードで藤木が卑怯者になるきっかけがあったように思う。それ以…
恋愛小説の書き方を学びたいなら、まず、この『虞美人草』を読む事をお勧めする。明治時代の小説だと思って侮ってはいけない。恋愛小説を成立させる全ての要素が、余すところなく詰め込まれている。複雑な人間関係、キャラクターの類型、ドラマの展開のさせ…
自分は飲食店で注文するのが苦手である。ラーメン屋に行くと、皆口々に「麺固め」「ネギ多め」「背油少なめ」「ニンニク抜き」なんて注文をする。自分はあれができないのである。店員に「トッピングはどうしましょう?」と聞かれても毎回「全部、普通で」と…
自分は遠藤周作という作家が好きだ。遠藤周作を含め、自分には好きな作家が何人かいる。自分の趣味嗜好を分析してみると、その好きな作家に共通する作風が見えてくる。ここで注釈を入れると、「作家」は好きだが、彼らの書く「作品」が全て好きという訳では…