松本雄貴のブログ

本。映画。演劇。旅。

小説

16回目「メタモルフォシス」(羽田圭介:新潮文庫)

表題作の「メタモルフォシス」と「トーキョーの調教」の2作品が収録されている。 どちらも、マゾヒズムという特殊な性癖を有した男が主人公で、そっち方面の描写がかなりエグい。墓地での露出プレイなどは序の口で、おっさんに肛門を掘られたり、ウ●コを食…

14回目「異邦人」(アルベール・カミュ:新潮文庫)

コロナウイルスの影響で「ペスト」が売れているらしい。未知のウイルス《ペスト》に立ち向かう人々の話で、「異邦人」と並ぶカミュの代表作であり不条理文学の金字塔だ。出版不況とか、若者の活字離れとか言われて久しいが、読書の習慣がなかった人でも、割…

13回目「その街の今は」(柴崎友香:新潮文庫)

この小説は平成18年に書かれたらしい。つまり、今から12年ほど前に書かれた小説だ。舞台は現代の大阪で、現代人の女性が主人公だ。ここでいう「現代」とは、12年前のことをいう。要するに12年前の柴崎友香さんが、12年前の大阪を舞台に書いた小説…

12回目「塩狩峠」(三浦綾子:新潮文庫)

敬虔なクリスチャンの父母の元に産まれた青年が、様々な人との出会いと別れの中で成長し、自らも敬虔なクリスチャンになり、最後は列車の事故から自らの身を犠牲にして乗客の命を守り死ぬ、という物語。要するに、一人の人間の幼少期から死ぬまでの一生を描…

9回目「痴人の愛」(谷崎潤一郎:新潮文庫)

男は真面目で、知識・教養があり、年上で人生経験も豊富で、良い職に就き、安定した収入(かなりの高給)があり、自立している。基本的には常識人。女は不真面目で、年下で、カフェの給仕以外の社会経験がなく、勉強もできない(英語の発音はとても上手いけれど…

8回目「告白」(町田康:中央公論新社) 猫町倶楽部の読書会にて

猫町倶楽部という団体が主催している読書会に参加してきた。 課題本を読了した参加者たちが、グループに分かれて課題本の感想を言い合う。1グループがだいたい7,8人で、テーブルを囲って読んだ本について語り合う。ワンドリンクが付いていて、アルコールも飲…

7回目「コンビニ人間」(村田沙耶香:文春文庫)

現在進行形で活躍されている現代作家の小説は、ほとんど読まない。別に読まないと決めているわけではないが、あまり食指が動かない。現代作家の書く小説は、活字離れが著しい現代において、どこか「読みやすさ」「わかりやすさ」のみに重点が置かれているよ…

4回目「透明な迷宮」(平野敬一郎:新潮文庫)

巻末に平野敬一郎のメールアドレスが載っていって「小説の感想などもお待ちしています」なんて書いてあったから感想を送ろうかなと思う。6つの短編が収録されている。初めて読んだ作者で、なんとなく文体が三島由紀夫ぽいと感じて後でネットで調べたら、確…