日々の読書日記

読書の忘備録です

2020-01-01から1年間の記事一覧

13回目「その街の今は」(柴崎友香:新潮文庫)

この小説は平成18年に書かれたらしい。つまり、今から12年ほど前に書かれた小説だ。舞台は現代の大阪で、現代人の女性が主人公だ。ここでいう「現代」とは、12年前のことをいう。要するに12年前の柴崎友香さんが、12年前の大阪を舞台に書いた小説…

12回目「塩狩峠」(三浦綾子:新潮文庫)

敬虔なクリスチャンの父母の元に産まれた青年が、様々な人との出会いと別れの中で成長し、自らも敬虔なクリスチャンになり、最後は列車の事故から自らの身を犠牲にして乗客の命を守り死ぬ、という物語。要するに、一人の人間の幼少期から死ぬまでの一生を描…

11回目「髪結いの亭主」(パトリス・ルコント監督)

まず、タイトルが良い。なぜ、タイトルが良いかというと、映画の内容がまさに「髪結いの亭主」の話であるのと、これは、ネットで初めて得た知識なのだが、「髪結いの亭主」とは、日本の諺でもあり、その意味は「旦那が働かず、嫁の稼ぎで食っていること」或…

10回目「パラサイト 半地下の家族」(ポン・ジュノ監督)

カンヌのパルムドールに続き、アカデミー賞作品賞まで獲った話題の韓国映画。なので、沢山の人が観て、沢山の人がレビューを書いている。なので、今さらネタバレがどうのこうのいうレベルでもないだろう。むしろ、多少ネタバレしたところで、面白さに変わり…

9回目「痴人の愛」(谷崎潤一郎:新潮文庫)

男は真面目で、知識・教養があり、年上で人生経験も豊富で、良い職に就き、安定した収入(かなりの高給)があり、自立している。基本的には常識人。女は不真面目で、年下で、カフェの給仕以外の社会経験がなく、勉強もできない(英語の発音はとても上手いけれど…

8回目「告白」(町田康:中央公論新社) 猫町倶楽部の読書会にて

猫町倶楽部という団体が主催している読書会に参加してきた。 課題本を読了した参加者たちが、グループに分かれて課題本の感想を言い合う。1グループがだいたい7,8人で、テーブルを囲って読んだ本について語り合う。ワンドリンクが付いていて、アルコールも飲…

7回目「コンビニ人間」(村田沙耶香:文春文庫)

現在進行形で活躍されている現代作家の小説は、ほとんど読まない。別に読まないと決めているわけではないが、あまり食指が動かない。現代作家の書く小説は、活字離れが著しい現代において、どこか「読みやすさ」「わかりやすさ」のみに重点が置かれているよ…

6回目「リチャード・ジュエル」(クリント・イーストウッド監督)

自分が今までに見たイーストウッド監督の映画は「運び屋」「15時17分、パリ行き」「ハドソン川のきせき」「アメリカン・スナイパー」「グラントリノ」「ミスティックリバー」「チェンジリング」「硫黄島からの手紙」「ミリオンダラーベイビー」の9本だ。比…

5回目「希望のかなた」(アキ・カウリスマキ監督)

シリアからフィンランドに亡命してきた青年と、新たにレストランの経営を始めた中年男性のお話。シリアスな内容なのにたまに笑わせる。レストランメニューを寿司に変更したくだり、面白かった。青年がフィンランドの保護施設で面接官相手にシリアからフィン…

4回目「透明な迷宮」(平野敬一郎:新潮文庫)

巻末に平野敬一郎のメールアドレスが載っていって「小説の感想などもお待ちしています」なんて書いてあったから感想を送ろうかなと思う。6つの短編が収録されている。初めて読んだ作者で、なんとなく文体が三島由紀夫ぽいと感じて後でネットで調べたら、確…

3回目「スリー・ビルボード」(マーティン・マクドナー監督)

アメリカの小さな町で、凄惨な事件が起きた。被害者は何者かにレイプされた挙句に殺害された。そして、7年が経過したが未だに犯人は分からず手掛かりさえ掴めない。業を煮やした被害者の母親は、道路沿いに立ててある3つの巨大看板に警察への抗議の広告を載…

2回目「マジカルガール」(カルロス・ベルムト監督)

脚本も演技も演出も全て素晴らしいけれど、好きになれない映画というものも存在する。「マジカル・ガール」そんな映画だ。 白血病で余命1年も無い娘のために、娘の好きなアニメの衣装を買ってあげようとするが、高価すぎて手が出ない無職の男。このおっさん…

1回目「家族を想うとき」(ケン・ローチ監督)

失業中の夫が、妻と二人の子供を養うため、宅配ドライバーとして再スタートする物語。タイトルとドラマのあらすじだけを聞くと、いかにも、家族の絆を描いた心温める映画だと思うだろう。しかし、結論からいえば、この映画はそんな生易しい映画ではない。観…