松本雄貴のブログ

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93回目「イエスタデイ」(ダニー・ボイル監督)

ビートルズについては、一応、代表曲とメンバーの名前くらいは知っている。東洋思想とかヨガに嵌ってインドのリシュケシュという街に滞在していた、という噂も聞いたことがある。でも、自分がビートルズについて知っていることは、それくらいだ。なぜか、ビートルズに関しては、あまり彼らの作った音楽を聴きたいと思わないのである。興味が湧かない。子供の頃、音楽の授業で「イマジン」を聴いたが、良いとは思わなかった。ありがちで偽善的な歌だなぁ、という感想しか持たなかった。それはビートルズの責任ではなく、捻くれた自分の性格のせいである。

そういう自分だから、この映画を真っ当に評価する資質はないように思う。ビートルズは世界中の誰もが知っている最も偉大なミュージシャン、という前提で作られた映画なので、その前提に当てはまらない自分のような人間は、お呼びでないのかもしれない。

と言いつつ、この映画はとても楽しく拝見できた。

売れないミュージシャン志望の青年が主人公である。ある日、世界中で停電が起き、数秒後に復旧したら、青年以外の誰もがビートルズを知らない世界になっていた、という設定である。この設定がまず面白い。青年は、誰もビートルズを知らないのを良いことに、ビートルズの作った曲を、さも自分が作った曲のように唄う。青年はビートルズの存在しない世界で、自分だけが知るビートルズの曲を唄うことにより成功する。そこに恋愛や、大衆に受ける曲を歌わそうとする周りとの葛藤などを織り込んだ、すこぶる楽しい映画だった。

それで、一番の成功は、自分のような捻くれた人間にも「ビートルズの曲をもっと聴いてみたい」と思わせたことだろう。

イエスタデイ (字幕版)

イエスタデイ (字幕版)

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