松本雄貴のブログ

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37回目「ONE OUTS」(甲斐谷忍:集英社コミックス)

『異端の鳥』という映画を観たいと思っていたのだが、まだ観ていない。映画を観に行く時間が無いのだ。ただ、今後、時間が出来ても恐らく『異端の鳥』は観ないと思う。何故か。『異端の鳥』を観た人のレビューを沢山読んでいるうちに、どうも観る気が失せてしまったのだ。

主人公の少年が、めちゃくちゃ迫害され差別され虐待され、人間としての尊厳を徹底的に踏みにじられるが、最後は希望が持てる映画。

多くの人が書いたレビューを総合すると、概ね以上のような映画らしい。

だいたいどんな映画かは分かったし、今の精神状態で観るのはなかなか辛いので、きっと観ないと思う。

 
 ということで、本日は『ONE OUTS』という漫画を紹介する。「ワンナウツ」と読む。『ライアーゲーム』の作者、甲斐谷忍の漫画だ。『ライアーゲーム』よりも前に描かれた漫画なので、けっこう昔の漫画なのだが、今読んでも面白いし、設定が斬新だ。

マックス120k/h前後のストレートしか持ち球のないピッチャー(渡久地東亜)が、相手バッターの心理を読み取りアウトを重ねていくという物語。

 多くの野球漫画は、最終的に力と力の勝負になりがちだが、『ONEOUTS』は「理屈」のみで勝負している漫画だ。ここが新しい。暴風雨で球場が水浸しになっても試合を続けたり、観客全員がイカサマに関わっていたり、と、部分的には強引でデタラメな設定もあるが、そのデタラメさを「理屈」が凌駕している。ありえない設定でも、ありえる、と思わせる。心理学の要素を野球漫画に持ち込み、成立させている。とてもスマートで知的な野球漫画だ。

また『ONE OUTS』は、相手チームだけでなく、味方であるはずの球団オーナーも敵になる。二つの敵を相手に、渡久地東亜がどのように切り抜けるか、というなかなか難しい設定だが、これも全く破綻がなく上手に纏められている。

主人公の渡久地は、悪魔的な洞察力で相手打者を翻弄し、騙し、罠にかける冷酷でダーティーな主人公だが、理屈が一本、きちんと通っているので、読んでいて清々しいのだ。

そして、最後は少しホロっとさせられる。

球漫画だが、現代の難しい社会を生き抜くための教訓も散りばめられている。渡久地のセリフは、数多存在する胡散臭い自己啓発本よりも、役にたつ。

 

ちょっと、纏まりのないレビューで申し訳ないけど、体調がすぐれないので、今日はこの辺で。

でも、本当に面白い漫画です。

以上。

 

ONE OUTS 全20巻 完結セット (ヤングジャンプコミックス)

ONE OUTS 全20巻 完結セット (ヤングジャンプコミックス)

  • 作者:甲斐谷 忍
  • 発売日: 2011/02/28
  • メディア: コミック