松本雄貴のブログ

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24回目「レイニーデイ・イン・ニューヨーク」(ウディ・アレン監督)

アーティスト名と曲名は伏せるが、最近よく耳にする歌がある。恋愛ソングで、甘いというより幼い声が特徴の男性ボーカルの歌だ。至る所で流れている。知人に確認したら、実際に今、すごく売れているらしい。特に、若い人たちの間で大人気らしい。

・・・全く理解できない。歌詞が猛烈に嫌だ。内容も陳腐だし、表現方法もダラダラと文章を垂れ流しているだけで、詞とは言い難い。一体、あの歌詞のどこにダンディズムがあるというのだ。ファンの方には申し訳ないが、このテの歌には不快感しかない。至る所で流れているので、嫌でも耳にしてしまう。そして、その度に「なんじゃ、この曲は!」とムカついているのだ。最近では、わざわざムカつきたいが為に敢えて聴く時もあるくらいだ。

ウディ・アレンの「レイニーデイ・イン・ニューヨーク」も最初の30分程、このテの恋愛ソングを聞いた時の感触と同じものを感じた。雨のニューヨークを舞台にした、大学生カップルの恋愛映画だ。彼女は大学で新聞記者のようなことをしている。ひょんなことから、ある巨匠の映画監督のインタビューをすることになり、彼氏と一緒にニューヨークに行くことになる。彼氏は、好きな彼女とニューヨークを旅行できるとウハウハだけど、件の監督のインタビューが長引いてしまい、結局はニューヨークで離ればなれになってしまう。そうして離ればなれになった先で、彼氏には彼氏の、彼女には彼女の、それぞれの物語が進行していく、というお話。この設定だけで、30歳を超えたおっさんが観るにはなかなか辛いものがある。元カノの妹がどうしたとか、キスが何点だとか、そんな事を言われても、背中がむず痒い。そんな訳で、最初の30分ほどはずっと苦痛な時間を過ごしたのだが、後半のあるシーンで映画のテイストが180度変わるのだ。このシーンが無ければ、上記のようなJ-POPの歌詞に似た恥ずかしさだけが残る映画にしかならなかった。このシーンと、そこで交わされる母親のセリフを聞くだけでも映画を観る価値はあるのではないだろうか。それくらい、狂気を帯びたセリフだと個人的には思った。
そして、最後に取って付けたような感想で申し訳ないが、ラストの主人公の男の子の表情がとても良かった。雨が、いい味を出していた。
以上。

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レイニーデイ・イン・ニューヨーク