松本雄貴のブログ

本。映画。演劇。旅。

映画

53回目「聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア」(ヨルゴス・ランティモス監督)

この映画はヤバいと聞いていた。「ヤバい」とは色々な意味を含む。単純に面白いという意味もあるし、その逆もある。多くの人のレビューを読んでいると、どうもこの映画は観た人を不快にさせるという意味でヤバイらしい。 ミヒャエル・ハネケとかラース・フォ…

51回目「アメリ」(ジャン=ピエール・ジュネ監督)

『アメリ』は、当たり前だが「アメリ」という名前の女性が主役の映画だ。 『アメリ』は公開当時、一大ブームになったらしい。詳しくは知らないのだが、アメリのファッションを真似したり、生活スタイルを真似したり、劇中でアメリが食べるクレームブリュレが…

49回目「ラストエンペラー」(ベルナルド・ベルトルッチ監督)

半藤一利の追悼という訳でもないが、『昭和史 1926-1945』(平凡社ライブラリー)を読んでいる。その最中に観たのが、ベルナルド・ベルトルッチの『ラストエンペラー』だ。映画の主役である愛新覚羅溥儀は、『昭和史』の最初の方に紹介される。『昭和史』は、…

48回目「ムカデ人間」トム・シックス監督

観る前は「どうせクソみたいな映画だろうなぁ」と高を括っていたが、見終わった後、「意外と面白かった」と思ってしまった。ただ、この手の映画の場合「意外と面白かった」というのは褒め言葉にはならない気がする。或いは、一番言って欲しくない言葉なので…

46回目「銀河」(ルイス・ブニュエル監督)

ブログは最低でも月に3回は更新しようと思っている。だから、月末近くになっても2回しか更新できていなければ、けっこう焦る。別にノルマがあるわけでもないし、自分の人生においてブログを書く必要性など特にないのだが、毎度の如く「早く書かなければ」と…

45回目「アメリカン・ビューティー」(サム・メンデス監督)

監督のサム・メンデスは、『1917命をかけた伝令』が昨年のアカデミー賞にノミネートされた。しかし結果は、作品賞も監督賞もポン・ジュノの『パラサイト 半地下の家族』だった。この結果には納得できる。『1917~』も面白いとは思うが、両者を比べるとやはり…

43回目「π」(ダーレン・アロノフスキー監督)

数学の世界には、ミレニアム懸賞問題というものが7つある。証明すれば1億円もらえるらしい。ざっくり言うと、数学のめちゃくちゃ難しい未解決問題だ。文系の自分には、想像もつかない。興味のある人は「ミレニアム懸賞問題」でググってください。近年、7つ…

42回目「パリ、テキサス」(ヴィム・ヴェンダース監督)

家族を捨て、行方不明になっていた男(トラヴィス)がテキサスの砂漠で倒れているのを発見される。連絡を受けた男の弟が、彼を迎えに行く。トラヴィスは、しばらく弟夫婦の家に世話になる。弟夫婦の家には、トラヴィスの実の息子(ハンター)がいた。弟夫婦…

39回目「サーミの血」(アマンダ・ケンネル監督)

スウェーデン北部に住む少数民族サーミ人の少女を主人公にした物語。人種差別をテーマにした映画で、主人公が、スウェーデン人から理不尽で屈辱的な仕打ちを受けるシーンは、観ていて辛くなる。 映画としては、よくわからないシーンが幾つかあって(というの…

36回目「ルルドの泉で」(ジェシカ・ハウスナー監督)

2011年公開「ルルドの泉で」のレビュー

35回目「マティアス&マキシム」(グザヴィエ・ドラン監督)

グザヴィエ・ドランの新作「マティアス&マキシム」の感想

27回目「彼女が消えた浜辺」(アスガル・ファルハーディー監督)

2009年に公開されたイラン映画のレビュー

26回目「4ヶ月、3週と2日」(クリスティアン・ムンジウ監督)

意味深なタイトルに引かれてDVDで観た。数年前にパルムドールを受賞したルーマニアの映画という情報以外は、なんの予備知識もなかった。タイトルから、4か月後に地球が滅亡するのに立ち向かう人類の話かな、などと馬鹿な連想をしたのだが、全然違う映画だっ…

24回目「レイニーデイ・イン・ニューヨーク」(ウディ・アレン監督)

アーティスト名と曲名は伏せるが、最近よく耳にする歌がある。恋愛ソングで、甘いというより幼い声が特徴の男性ボーカルの歌だ。至る所で流れている。知人に確認したら、実際に今、すごく売れているらしい。特に、若い人たちの間で大人気らしい。 ・・・全く…

23回目「ペイン・アンド・グローリー」(ペドロ・アルモドバル監督)

ペドロ・アルモドバルの映画は脚本がとても込み入っている。だから、集中して観ないと話が分からなくなり、置いてきぼりを喰らってしまう。しかし、過去にアルモドバルの映画を観て集中力が切れた事はない。スペイン人特有の情熱を反映しているのか、映像が…

21回目「デッド・ドント・ダイ」(ジム・ジャームッシュ監督)

ジム・ジャームッシュの映画は、どれもお洒落だ。セリフにユーモアがある。なにげないカットにもセンスを感じる。「ジム・ジャームッシュの映画が好き」と言うと、なんとなく映画通を気取ることができる。「センスがある人」と思われたいなら、好きな映画を…

19回目「マイ・ファニー・レディ」(ピーター・ボグダノヴィッチ監督)

登場人物の関係性がごちゃごちゃとしており、最初の10分程はなかなかストーリーが掴めなかったが、途中から人物の関係性が分かってくると面白い。脚本がよくできている。コールガールとして働く女性が、演出家の客と出会う。彼女を気に入った演出家が彼女…

18回目「ブラックホーク・ダウン」(リドリー・スコット監督)

10代の頃は、戦争映画にアレルギーを持っていた。特にハリウッド産の戦争映画に対しては、どうせアメリカ側の正義を一方的に押し付ける映画だろうと決めつけていたので、殆ど見ていない。 20代になって「プライベートライアン」とか「地獄の黙示録」とか…

11回目「髪結いの亭主」(パトリス・ルコント監督)

まず、タイトルが良い。なぜ、タイトルが良いかというと、映画の内容がまさに「髪結いの亭主」の話であるのと、これは、ネットで初めて得た知識なのだが、「髪結いの亭主」とは、日本の諺でもあり、その意味は「旦那が働かず、嫁の稼ぎで食っていること」或…

10回目「パラサイト 半地下の家族」(ポン・ジュノ監督)

カンヌのパルムドールに続き、アカデミー賞作品賞まで獲った話題の韓国映画。なので、沢山の人が観て、沢山の人がレビューを書いている。なので、今さらネタバレがどうのこうのいうレベルでもないだろう。むしろ、多少ネタバレしたところで、面白さに変わり…

6回目「リチャード・ジュエル」(クリント・イーストウッド監督)

自分が今までに見たイーストウッド監督の映画は「運び屋」「15時17分、パリ行き」「ハドソン川のきせき」「アメリカン・スナイパー」「グラントリノ」「ミスティックリバー」「チェンジリング」「硫黄島からの手紙」「ミリオンダラーベイビー」の9本だ。比…

5回目「希望のかなた」(アキ・カウリスマキ監督)

シリアからフィンランドに亡命してきた青年と、新たにレストランの経営を始めた中年男性のお話。シリアスな内容なのにたまに笑わせる。レストランメニューを寿司に変更したくだり、面白かった。青年がフィンランドの保護施設で面接官相手にシリアからフィン…

3回目「スリー・ビルボード」(マーティン・マクドナー監督)

アメリカの小さな町で、凄惨な事件が起きた。被害者は何者かにレイプされた挙句に殺害された。そして、7年が経過したが未だに犯人は分からず手掛かりさえ掴めない。業を煮やした被害者の母親は、道路沿いに立ててある3つの巨大看板に警察への抗議の広告を載…

2回目「マジカルガール」(カルロス・ベルムト監督)

脚本も演技も演出も全て素晴らしいけれど、好きになれない映画というものも存在する。「マジカル・ガール」そんな映画だ。 白血病で余命1年も無い娘のために、娘の好きなアニメの衣装を買ってあげようとするが、高価すぎて手が出ない無職の男。このおっさん…

1回目「家族を想うとき」(ケン・ローチ監督)

失業中の夫が、妻と二人の子供を養うため、宅配ドライバーとして再スタートする物語。タイトルとドラマのあらすじだけを聞くと、いかにも、家族の絆を描いた心温める映画だと思うだろう。しかし、結論からいえば、この映画はそんな生易しい映画ではない。観…